トルコ クルド人弁護士殺害で治安対策批判デモ
2015年11月29日 8時02分
トルコ南東部で、地元の有力な弁護士のクルド人の男性が何者かに銃撃されて死亡し、これをきっかけに、政府の治安対策などを批判するデモが国内各地で起きています。
トルコ南東部のディヤルバクルで28日、地元の弁護士会が開いていた集会の会場を何者かが襲撃して治安部隊との間で銃撃戦になり、警察官2人とクルド人で弁護士会会長のタヒル・エルチ氏が死亡しました。
事件を受けてダウトオール首相は会見を開き、エルチ氏を狙った暗殺か、治安部隊を狙った襲撃にエルチ氏が巻き込まれたかの2つの可能性があるという見方を示したうえで、「この事件を絶対に解決する」と述べました。
トルコには、イラクやシリアなどにまたがって暮らす独自の国家を持たない民族、クルド人も住んでいて、一部は武装組織を作り、長年トルコ政府と対立しています。
今回、クルド人のエルチ氏が死亡したことをきっかけに、現場となったディヤルバクルや最大都市イスタンブールなど国内各地でクルド人などが通りに出て政府の治安対策を批判するデモを行い、治安部隊と衝突しています。
トルコでは先月、首都アンカラでクルド人など100人以上が犠牲になるテロも起きていて、今回の事件をきっかけに、政府とクルド人の間で再び緊張が高まる懸念が出ています。
・長年 クルド人の人権擁護に取り組む
みずからもクルド人であるタヒル・エルチ氏は、クルド人が多く暮らすトルコ南東部ディヤルバクルの弁護士会の会長を務め、長年、クルド人の人権擁護に取り組んできた著名な活動家でもありました。
トルコ政府が、ことし7月、クルド人武装組織「クルド労働者党」に対する大規模な軍事作戦に乗り出して以降、エルチ氏は、双方に和平を呼びかけ、28日も、トルコの治安部隊とクルド人武装組織の衝突が原因で、歴史的建造物に被害が出ていることを訴える集会を開いていました。
また先月、地元テレビ局に出演して、この武装組織について「テロ組織ではない」と発言し、擁護するような姿勢を示したことから、テロ組織の宣伝を行った疑いで治安当局に一時、身柄を拘束されるなど捜査の対象となっていました。
・トルコ政府とクルド人
トルコでは、隣国のイラクやシリアなどにまたがって暮らす独自の国家を持たない民族、クルド人が人口の1割を占めます。その一部が結成したクルド人武装組織は長年、分離独立を目指して活動し、これに対して、
トルコ政府はことし7月、大規模な軍事作戦に乗り出しました。
また、ことし6月に行われた総選挙ではクルド系の政党が躍進し、与党を初めての過半数割れに追い込みましたが、今月1日に行われたやり直しの総選挙では、与党が票を取り戻して圧勝し、結果に不満を持つ
クルド人と治安部隊の衝突も起きていました。
さらに隣国シリアでは、地上で過激派組織IS=イスラミックステートと戦うクルド人勢力の部隊を、アメリカ主導の有志連合が空爆で支援していますが、有志連合のメンバーでもあるトルコは、
クルド人が勢力を伸ばすことを警戒するなど、トルコの対クルド人政策が、有志連合の足並みの乱れにつながっています。